NBA2011/12-2019/20シーズンのリーグ平均eFG%(シュート効率)
2010年代を物語る進化の数字
この10年間確実に各チームが取り組んだ数字
前回の記事で、リーグの得点力向上に一番大きく貢献した数字として、3Pを取り上げました。
ただそんな簡単に3Pを各チームが、しかもNBAのハイレベルで上手くなり、他チームよりも決められるようになるわけではありません。例えば2019/20シーズンのMVPヤニス・アデトクンボのデビューからの7シーズンの3Pの数字があります。
最近のヤニスを観ていると3P決める数が増えたと思うことは多々あるのですが、グラフのグレーの線で表記している決定率自体は、それほど変わっておらず、精度というのは簡単に上げれるわけではないことを示しています。
ただ試投数を増やせば決定数が増えることは、ヤニスの数字を見るとわかります。
デビューシーズンから比べると、2019/20シーズンには3倍ほど試投数(オレンジの棒)が増えており、1試合あたり1.5本(青い棒)は3Pを決めるようになっています。これは大きな進化で、1試合に1本でも決めてくれるようになることで、守る側としてはヤニスのドライブへの対応が難しくなります。
ヤニスの2Pの決定率(グレーの線)がここ2シーズンで大きく飛躍しています。もちろんマイク・ビューデンホルツァーの就任によるチームの戦術の変化もありますが、3Pの試投数が目に見えて増え始めた2018/19シーズンから2Pの決定率も向上しています。
これは3Pを打てるようにすることで、インでの勝負を優位にしていることの裏付けだと思います。
そして捉え所が難しくなったヤニスに対するファウルが増えたことにより、フリースローの本数が増え、試投の割合の中でフリースローの割合(オレンジの線)が増えています。
それにより、フリースローの決定数が増え、ヤニス自身の得点の向上に寄与しています。
ヤニスの得点数が2015/16シーズンと2019/20シーズンを比較すると、13点ほど増えていて、その中でも3Pの割合が2倍になっており、先ほどの表にもあるとおり2Pは1.5倍決定数が増え、グラフはないがフリースローは約2倍増えている。
シュート効率の上がったヤニスは止めにくい選手になっており、結果としてヤニスの得点数が増えています。
ヤニスのシュート効率は、2019/20シーズンのeFG%1位だったバックスの中でも出色の出来となっています。
やはりこの10年間は、本来ドライブとリング下の戦いで戦うことを主戦場とするヤニスのようなプレイヤーを3P上達、フリースロー獲得を絡める知性、ここでは紹介していませんがアシスト数の進化と、シュートへの効率を高め、よりパワフルに知的に戦えるプレイヤーへと進化を遂げた10年間だったように思います。
そんなこの10年間を象徴するようなeFG%の進化をこの10年間の推移と共にデータで振り返ってみたいと思います。
2011/12~2019/20シーズンのリーグ平均のデータ
まずこの10年間は、2014/15シーズンを除き、eFG%は毎年増加しています。
2011/12~2013/14シーズンのチーム平均のデータ
この3シーズンでは、マイアミ・ヒートとサンアントニオ・スパーズ、オクラホマシティ・サンダーが上位にいます。
シーズンを制す強いチームがeFG%でも上位にくる傾向にあるのかもしれません。
- 2011/12シーズン
- ファイナル優勝チーム:マイアミ・ヒート
- 東優勝:マイアミ・ヒート/西優勝:オクラホマシティ・サンダー
- シーズンMVP:レブロン・ジェームズ(ヒート)
- 新人王:カイリー・アービング(キャバリアーズ)
- 得点王:ケビン・デュラント(サンダー)
- 主なドラフト:1位カイリー・アービング/その他:ケンバ・ウォーカー、クレイ・トンプソン、カワイ・レナード、ジミー・バトラー
- 2012/13シーズン
- ファイナル優勝チーム:マイアミ・ヒート
- 東優勝:マイアミ・ヒート/西優勝:サンアントニオ・スパーズ
- シーズンMVP:レブロン・ジェームズ(ヒート)
- 新人王:デイミアン・リラード(トレイルブライザーズ)
- 得点王:カーメロ・アンソニー(ニックス)
- 主なドラフト:1位アンソニー・デイビス/その他:デイミアン・リラード、ブラッドリー・ビール、アンドレ・ドラモンド、ドレイモンド・グリーン、クリス・ミドルトン
- 2013/14シーズン
- ファイナル優勝チーム:サンアントニオ・スパーズ
- 東優勝:マイアミ・ヒート/西優勝:サンアントニオ・スパーズ
- シーズンMVP:ケビン・デュラント(サンダー)
- 新人王:マイケル・カーター・ウィリアムス(シクサーズ)
- 得点王:ケビン・デュラント(サンダー)
- 主なドラフト:1位アンソニー・ベネット/その他:ヤニス・アデトクンボ、ビクター・オラディポ、C・J・マッカラム、ルディ・ゴベア
2014/15~2016/17シーズンのチーム平均のデータ
この3年では、覇権が変わったことが分かります。ウォリアーズとキャバリアーズ、クリッパーズあたりが上位に入ってきています。
覇権の移り変わりに、eFG%は大きな影響を及ぼしている可能性が高くなってきました。
- 2014/15シーズン
- ファイナル優勝チーム:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- 東優勝:クリーブランド・キャバリアーズ/西優勝:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- シーズンMVP:ステフィン・カリー(ウォリアーズ)
- 新人王:アンドリュー・ウィギンズ(ティンバーウルブズ)
- 得点王:ラッセル・ウェストブルック(サンダー)
- 主なドラフト:1位アンドリュー・ウィギンズ/その他:ジョエル・エンビード、ニコラ・ヨキッチ、アーロン・ゴードン、マーカス・スマート、ザック・ラビーン
- 2015/16シーズン
- ファイナル優勝チーム:クリーブランド・キャバリアーズ
- 東優勝:クリーブランド・キャバリアーズ/西優勝:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- シーズンMVP:ステフィン・カリー(ウォリアーズ)
- 新人王:カール=アンソニー・タウンズ(ティンバーウルブズ)
- 得点王:ステフィン・カリー(ウォリアーズ)
- 主なドラフト:1位カール=アンソニー・タウンズ/その他:ディアンジェロ・ラッセル、クリスタプス・ポルジンスキ、デビン・ブッカー、モントレズ・ハレル
- 2016/17シーズン
- ファイナル優勝チーム:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- 東優勝:クリーブランド・キャバリアーズ/西優勝:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- シーズンMVP:ラッセル・ウェストブルック(サンダー)
- 新人王:マルコム・ブログドン(バックス)
- 得点王:ラッセル・ウェストブルック(サンダー)
- 主なドラフト:1位ベン・シモンズ/その他:ブランドン・イングラム、ジェイレン・ブラウン、バディ・ヒールド、ジャマール・マリー、ドマンタス・サボニス、マルコム・ブログドン
2017/18~2019/20シーズンのチーム平均のデータ
やはりここでも覇権に直接影響を与えていることが分かります。
2017/18シーズンは、ウォリアーズ・キャバリアーズ・ロケッツが上位に位置し、2018/19シーズンはウォリアーズ・バックス・ラプターズ・ロケッツが上位に、そして2019/20シーズンはバックス・ジャズ・ヒートが上位に位置しています。
ただし一番直近である2019/20シーズンは兆候が変わってきたようにも見えます。3Pやフリースローは重要であることは間違いないし、eFG%の重要度が大切であることは変わりないが、ジャズは西6位、ヒートは東5位、マーベリックスは西7位と必ずしも覇権を制すチームが上位を占めるという傾向ではないシーズンとなっています。
例えば西を圧倒的に制したレイカーズはeFG%5位と、これまで西で1位のチームがeFG%でも1位や2位を獲っていたが、2019/20シーズンは違う結果となりました。
次回はそんなレイカーズがこれまでの西1位チームとどう違うかをデータから見てみたいと思います。何か2020/21シーズン以降の兆候に影響を与える可能性のある傾向が見えてくるかもしれません。
- 2017/18シーズン
- ファイナル優勝チーム:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- 東優勝:クリーブランド・キャバリアーズ/西優勝:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- シーズンMVP:ジェームズ・ハーデン(ロケッツ)
- 新人王:ベン・シモンズ(シクサーズ)
- 得点王:ジェームズ・ハーデン(ロケッツ)
- 主なドラフト:1位マイケル・フルツ/その他:ロンゾ・ボール、ジェイソン・テイタム、ディアロン・フォックス、ドノバン・ミッチェル、バム・アデバヨ、
ジョン・コリンズ、カイル・クーズマ
- 2018/19シーズン
- ファイナル優勝チーム:トロント・ラプターズ
- 東優勝:トロント・ラプターズ/西優勝:ゴールデンステート・ウォリアーズ
- シーズンMVP:ヤニス・アデトクンボ(バックス)
- 新人王:ルカ・ドンチッチ(マーベリックス)
- 得点王:ジェームズ・ハーデン(ロケッツ)
- 主なドラフト:1位ディアンドレ・エイトン/その他:ルカ・ドンチッチ、トレイ・ヤング、シェイ・ギルジャス=アレキサンダー、ディボンテ・グラハム
- 2019/20シーズン
- ファイナル優勝チーム:ロサンゼルス・レイカーズ
- 東優勝:マイアミ・ヒート/西優勝:ロサンゼルス・レイカーズ
- シーズンMVP:ヤニス・アデトクンボ(バックス)
- 新人王:ジャ・モラント(グリズリーズ)
- 得点王:ジェームズ・ハーデン(ロケッツ)
- 主なドラフト:1位ザイオン・ウィリアムソン/その他:ジャ・モラント、R・J・バレット、八村塁、タイラー・ヒーロー、マティス・サイブル、ブランドン・クラーク、エリック・パスカル